「この空白を満たしなさい」レビュー 心の空白を埋められない人間の死後の世界

この空白を満たしなさい

「この空白を満たしなさい」をNHKのドラマで見た。

原作は、芥川賞作家の平野啓一郎の作品であり、モーニング(講談社)で、2011年40号から2012年39号まで連載されたそうである。

私は、原作も漫画も読んでいなかったのでその展開に興味を持って観ることが出来た。

自殺した人間が生き返り、その死んだ原因を探ろうとする。

自殺したという事実は確かであるが、その理由は分からない。

死んだ人間は生き返って話すことは出来ないので、通常は死んだ人がこの世に再び再生することなど不可能であるが、

その不可能を小説という形で再現し具現化した作品となっている。

人は死ぬ瞬間は分からないのだろうか?

自分が自殺したということも分からず死んでいくのだろうか?

私には分からないが、このタイトルには初めて聞いた時からおなじみのフレーズだった。

Fill in the blanks

英語の試験問題に付きものの設問である。つまり、空所(  )に適語を入れなさいという訳である。

これを直訳すると「この空白を満たしなさい」となるのである。

人間が背負ってきた物が何であれ完全に空白を満たすことは不可能だと思う。

しかし、その空白を満たさなければ生きていくことは出来ないと思った。

TVでは、主人公は再度消えることを覚悟して物語は終わるのであるが、

空白は埋められたと言っても良いと思う。

彼は空白を埋めることは出来たのだから、また消えてしまってもその存在理由は明らかにされる。

もはや、死であるとか生であるのかの問題でもない気がする。

誰にも言えない心にぽっかりと空いた空白を埋めるために今日も生きることにする。

この空白を満たしなさい

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竹 慎一郎

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