新宿で呑んで終電に乗り遅れてしまった。
裏通りをとぼとぼ歩いて公園で寝ようとあたりをさまよっていた。
腹巻をした老人が近寄って来て、お金を恵んでくれと言ってきた。
当然断ったが、そこで別な2人の人物が行く手を遮ってきた。
一人は中年、背は低いが、いかつい顔をしており、もう一人は若く背が高い。
「俺のシマで何をやってるんだ、金を出せ」典型的なやくざだ。
さっきの腹巻はもういない。
今度は、逃げられないと思い、財布の中を見た。
5000円しかない。
この金がないと家に帰れないと私は言った。
そしたらびっくり、あそこのおでんやで両替して来いという。
なんと、タクシー代はくれるらしい。
3000円を渡すと彼らはうれしそうに言った。
新宿で困ったことがあったら、○組みのKのことを言えばいい。
俺は覚せい剤も持っているからまた連絡しろ、と言い捨て暗闇の中に去って行った。
かたぎに手を出すとはやくざも資金難なのだろうか。
それにしても、あの腹巻とさっきの2人組みは仲間なのだろうか?
私は2000円でタクシーで帰宅したが、3000円の大芝居を実際体験することが出来た。
○組みのKさん、今頃はどうしているだろうか。
20年前の話だから、もう70歳位ではないだろうか。
しかし、東京というところは恐い所だ。
もう、新宿駅の近くの細い道には近づかないようにしようと思った。
新宿は金さえあれば、何でも買える街だと感じた。
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