「ロスト・イン・マンハッタン」を観て。ホームレスとオリンピックの行方

"Lost in Manhattan". The Homeless and the Future of the Olympics

今から、30年位前、私は九州の田舎から東京の大学に入るため上京した。当時は、バブルの後期だったが、友人たちは一部上場企業に就職するものも多かった。公務員になるという選択肢は当時の景気を考えたとしてもなきに等しいものだったと思う。

バブルがはじけると、私の友人が就職していた、大手の証券会社はつぶれて私の狭い6畳一間にしばらくの間居候したこともあった。不況になると株価は暴落し、大学生は公務員志望が多くなっていった。時代の変化に対応しての選択だったと思うが、同時に終身雇用制の崩壊も意味していた。

今では、日本の将来を担う小学生への調査によると、就きたい職業にYoutuber やお笑い芸人がランクインする時代が今の日本である。良い大学に入って1流企業に入れば、一生安泰という時代は昔のものとなっているようだ。少子化が進んでいくが、子供が少ないために、子供にかける教育費も上がっていることも確かである。Youtuber やお笑い芸人を目指す若者が増えていく一方で、高い教育を受けるものも依然として多くなっていると思う。この2分化は興味深い。「貧乏を脱するのは教育しかない」、と言った北野武の母親の言葉は正解だと思う。教養はいくらあっても損はしない。Youtuberもお笑い芸人も高学歴の人が多いのも分かる気がする。もし、大学に行って勉強する機会が与えられる幸運に恵まれるとしたら、私は4年間の大学生活を、勉強だけではなく恋愛やアルバイトなどの社会的経験を積む恰好のチャンスだと思う。

東京にも大阪にもホームレスが集まる街がある。その街は特殊な街として当時は捉えられていたが、今ではその様相も変わり、一般の人も近づきやすいと聞く。

東京に住んでいた時、日曜日になると朝からその街に出かけて行ったものだ。朝から店の中は満員で皆酒を飲んでいる。普通の生活では考えられないことかもしれないが、そんな場所が心地よく感じた。その時の私の置かれた状況は最悪だった。酔いつぶれ道端で寝ていると、靴を盗まれたこともあった。ごみの山からスリッパを偶然見つけ、ほっとしたものだ。当時、ネットカフェはなかったが、一泊寝るだけで2000円位のおんぼろのホームレス用の簡易の宿泊施設はあった。そこは、眠ることはできないほどへど臭く、窓を開けて、外の空気を吸いながら、一体自分は何をしているのかと夜空を見ながら思ったものだ。寒く無ければ、公園のベンチで寝る方が良かった。その時、強く思ったことがある。

最低限、屋根の付いた所で寝ること。夏は冷房の効いた、冬は暖房の効いたオフィスで働くという3つのことだ。屋根の付いた所で寝ることは実現したが、後の2つは実現しなかったが、ホームレスに近い環境からは脱出することができた。

公園の一角で段ボールの家を作って暮らしてしている人がいる。2019年1月の、厚生労働省の調査によると、ホームレスの数は、全体で4,555人(男性4,253人、女性171人、不明131人)であり、ホームレスの数が最も多かったのは東京都(1,126人)次いで、大阪府の(1064人)となっている。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04461.html

ネットカフェ難民などホームレスとのボーダーの人も多いのでその数は、正確ではないかもしれないがその数倍はいるのではないかと思う。

しかし、アメリカは2020年の調査では57万人という数には衝撃さえ覚えてしまう。

Lost in Manhattan (2014)リチャード・ギア主演の映画を観た。2時間、事件らしい事件は起こらない。しかし、当時65歳のリチャード・ギアの演技を観ると時間も経つのも忘れて観たものだった。冬に屋根のない所で寝るのは辛い。マンハッタンの雰囲気も良く表現されていてまるでニューヨークにいるように感じた。

2021年7月23日に、東京オリンピックが迫っている。世界中から中止の声が寄せられ毎日のように報道されている。

1996年開催のアトランタ大会では、およそ1万人以上の路上生活者が逮捕され、2012年のロンドン大会では、住宅の斡旋など大規模な支援を実施した、一方で、再開発に伴い約1千人が強制退去となり、新たな路上生活者も生まれた事実もある。

あのリチャード・ギアの姿は他人ごとではない。私はかつての自分と重ね合わせ、これから開催されそうなオリンピックの行方を茫洋としながら空を見上げている。

"Lost in Manhattan". The Homeless and the Future of the Olympics

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竹 慎一郎

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