誰も住んでない実家に帰ると、時々妹と出くわすことがある。
内にはグランドピアノが2台あって、妹はピアノのレッスンで週に2.3度帰って来るという訳である。
私はテレビも付けずに静かに隣の部屋でそのピアノの音に耳を傾ける。
小学生や中学生が懸命に練習しているのを聴くと、これからが楽しみだな等と感じる。
妹も幼き頃からピアノを弾き始めた。
どうやら亡くなった母がピアノが好きで、母は放課後音楽室でピアノの練習をしていたらしい。
当時、ピアノが内にあるのは余程の金持ちだったと思う。
母が果たせなかったピアノへの愛着は、妹が引き続くことになった。
ということは内にはピアノの音が毎日夜遅くまで鳴り響いていたということである。
大学受験の時は、妹のピアノの音で勉強が出来ずに、学校から図書館へ通う日が続いた。
バイオリンの蚊の鳴くような音は、何故だか分からないが、受け付けることは出来ないのだけれども、
不思議とピアノの音は受け付けることが出来る。
レッスンの中で、単調な音階ではあるが耳に残る曲があった。
勿論、何という曲か分からないので、レッスンが終わると妹にさっきの曲は何という曲か聞いてみた。
竹内まりあと妹は言った。
あの山下達郎の奥さんの竹内まりあであろうか?
あの「元気を出して」の竹内まりあなのであろうか?
一瞬、戸惑いはしたがその曲が「いのちの歌」だと知った。
こんな曲があったなんて今まで知ることはなかったが、名曲だと思う。
ピアノの音色にふさわしいその歌詞は私の心を支配した。
中学校の卒業式の最後に歌うということも知った。
近くの中学なら聴きに行きたいと思ったほどだ。
3月は卒業の旅立つの時。別れの時。
体育館に曲が鳴り響くのが聞こえてくるかのように思える。
いつかは誰でも この星にさよならを
する時が来るけれど 命は継がれていく
生まれてきたこと 育ててもらえたこと
出会ったこと 笑ったこと
そのすべてにありがとう
この命にありがとう
いのちの歌
作詞 竹内まりあ 作曲 村松崇継
私は、茉奈佳奈バージョンが好きです。
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